鑑賞記録(2022.8.6)
【生誕90年 映画監督 大島渚】
大島渚監督
『絞死刑』1968
@シネ・ヌーヴォ
『絞死刑』1968/119分/日本/モノクロ/35mm
1958年の小松川女子高校生殺人事件をもとに、死刑制度存廃問題や在日朝鮮人問題などを追求した異色社会劇。死刑執行のドタバタを通じて描く、毒と笑いに満ちたブラックコメディにして大島の代表作。(「生誕90年 映画監督 大島渚」チラシより)
この映画は、ATGが独立プロダクションと制作費を折半する「一千万円映画」の第一弾である。(※この前の上野昻志さんのトークで、当時は大抵少なくとも、制作費が五〜六千万円はするので、大体5分の1程度の制作費らしい。)
あらすじ
在日朝鮮人死刑囚”R”は強姦致死等の罪で絞首刑に処せられた。しかし信じられないことに絞縄にぶら下がったRの脈はいつまで経っても停止せず、処刑は失敗する。縄を解かれたRは刑務官たちの努力の末に漸く意識を取り戻すが、処刑の衝撃で記憶を失い心神喪失となっていた。刑事訴訟法により、刑の言い渡しを受けた者が心神喪失状態にあるときには執行を停止しなければならない。刑務官たちは再執行のために彼に記憶と罪の意識を取り戻させようと躍起になるが、Rの無垢な問いかけは彼らの矛盾を鋭く抉ってゆく・・・(ウィキペディアより)
感想
強烈な内容と
ブラックユーモア!!
ありえない冒頭からのスタートが
死刑執行という笑えない状況に
ある種の
笑える状況を可能にしており、
そしてまさかの
軽快な茶番劇ともいうべき
執行官たちのすったもんだ!!
しかし、
それと同時に
人種的問題、貧困、
死刑制度そのものに対する
問題提起。
まず、冒頭で
問いかけられる。
あなたは
死刑制度に
賛成か反対か。
そしてここでも
妄想と現実の境が曖昧になっている。
(本作の直前に観た『日本春歌考』も
そのような所あり)
見えないものが見えたり、
見えるはずのものが
見えなかったり・・・?
もはや
何が本当なのかが
分からなくなってくる・・・
そんなものは
存在しないのだろうか・・・??
もうとりあえず、
分からないまま
観進める・・・ww
そして後半、
Rの背後の
白と黒。
光と影が絶妙にマッチし、
人間の二面性や
正と悪などを
強調しているかのようだ。
どちらか一方だけの人間など、
存在するのだろうか。
特に
前半とラストに
凄みを感じた。
この題材で
笑わせられつつ、考えさせられる
奇跡。
(2022年8月11本目。本年度280本目、映画館143本目)
スタッフ
監督:大島渚
脚本:田村孟、佐々木守、深尾道典、大島渚
撮影:吉岡康弘
音楽:林光
美術:戸田重昌
録音:西崎英雄
編集:白石末子
監督助手:小笠原清
監修:向江璋悦
製作:中島正幸、山口卓治、大島渚
製作:創造社+ATG
他
キャスト
R:尹隆道
拘置所長:佐藤慶
教育部長:渡辺文雄
教誨師:石堂淑朗
保安課長:足立正生
医務官:戸浦六宏
検事:小松方正
検察事務官:松田政男
女:小山明子
ナレーター:大島渚