鑑賞記録(2022.2.20)
フレデリック・ワイズマン監督
デビューにして衝撃作
『チチカット・フォーリーズ』1967
@神戸映画資料館
『チチカット・フォーリーズ』1967/84分/アメリカ/モノクロ・ブルーレイ
昨年末(2021年)から最新作『ボストン市庁舎』が公開の、現在、御歳91歳!ドキュメンタリーの巨匠、フレデリック・ワイズマン監督の記念すべき第1作目。
合衆国裁判所で一般公開が禁止された唯一の作品であり、永年に渡る裁判の末、91年にようやく上映が許可された。(神戸映画資料館2022年2月チラシより)
原題
Titicut Follies
一言あらすじ
マサチューセッツ州ブリッジウォーターにある精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を克明に描いた作品。収容者が、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者たちにどのように取り扱われているかが様々な側面から記録されている。(神戸映画資料館2022年2月チラシより)
感想
衝撃の映像。
収容者たちが、
(全員ではないのかもしれないが)
全裸の状態で
何もない独房に入れられる。
あるのは、
鉄格子の付いた窓だけ。
今はこんなことないんだろけど、、、
精神異常犯罪者ということだから
何かしらの犯罪は犯しているのだろうが、
カメラの前に映るのは、
あくまでも”人”だ。
その中でも
私が一番気になった人物は
自分は精神異常者ではないと
訴える人物だ。
(複数回登場している)
彼の意見は、
(もちろんカメラに映っているところだけだが)
もっともなことを言っているように見え、
むしろ、
医者たちの方が
彼に対する何らかの偏見がこびりつき
まともに取り合おうとせず、
薬の大量投入を検討する・・・
という様に見える。
ワイズマンは、
必ず撮影前に許可を取ってから
撮影するとのことなので、
医者たちも
自分の行動や言動に
後ろめたさなど無いだろうし、
それが日常のこととして
行っているはずだろう。
同じく看守も、
収容者に対し、
厳しい口調でこそないものの、
同じ質問を執拗に繰り返したりして、
そんなんじゃ、
仮に精神に異常がなくても
おかしくなるよな、、と思う。
先の私が気になった人物も、
「ここにいるからおかしくなる、
刑務所に行かせてくれ」
と訴える。
しかし、聞き入れてもらえない。
(ちなみに彼は、偏執病と診断されている。)
偏執病(へんしゅうびょう、偏執症)、パラノイア(英: paranoia)は、 不安や恐怖の影響を強く受けており、他人が常に自分を批判しているという妄想を抱くものを指す。 妄想性パーソナリティ障害の一種。(weblio辞書より)
ほんの一部なんだろうけれど、
こういった現実が
実際にあったという事実。
もっと酷い状況の所だって
あったかもしれない。
罪を犯したことに
弁解の余地はないだろうし、
償うべきものもあると思うが
人間の精神を矯正するには
力ずくで出来ると思えない・・・
まぁでも、
看守や医者も
あの特殊な状況が続くと、
それこそ普通の精神では
いられなくなりそうだとも思う。
では、誰にとっても良くないなら、
一体何の為にあるのか?
と言われると、
やはり収容するところはいるだろうし・・・
みたいな堂々巡りが始まる・・・
映画を観ていて、
勝手にそんなことを
ぼんやり考えてみる。
ワイズマン監督にしては、
84分と短い作品だし、
衝撃の映像が多く、
話す内容も
中々ショッキングなだけに
あっという間に
エンディングの歌が流れた。
そして、ここから
フレデリック・ワイズマン監督は
始まったんですね。
(2022年2月21本目。本年度58本目、映画館15本目)
スタッフ
監督・編集・製作:フレデリック・ワイズマン
撮影:ジョン・マーシャル
他