鑑賞記録(2022.3.11)
小津安二郎監督
小津作品初のカラー作
『彼岸花』1958
『彼岸花』1958/117分/日本/カラー(アグフア・ゲルバルト社フィルム)・スタンダード・モノラル
クレジットには、原作里見弴と記されているが、里見の小説「彼岸花」(『文藝春秋』1958年6月、角川書店刊)が、本作の先にあったわけではない。かねてより里見の小説に強い影響を受け、また鎌倉に暮らし里見と親交のあった小津が、里見の原作を映画にしたいと申し出たところ、里見が、映画化されることを前提に新作を書き下ろすことになった。その結果、里見、小津、脚本家野田高梧の三者で構想した大まかな筋のもと、小説、シナリオ別々に作られたものである。そのため、本作にとっての小説「彼岸花」は、通常の意味での「原作」ではない。実際、小説と本作とでは、多少の差異がみられる。
ちなみに、2年後の『秋日和』もこの方式で作られることになる。本作は、松竹の監督だった小津が、ライバル会社大映のスター女優・山本富士子を招いて撮った作品であり、そのお返しとして翌年、小津は大映で『浮草』を監督することになる。(中略)
初めてのカラーとなった本作を製作するにあたり、小津は西ドイツ(現ドイツ)のアグフア(現在のアグフア・ゲバルト)社のカラーフィルムを選んだ。当時の映画用カラーフィルムは実質的な選択肢として、アメリカのコダック、西ドイツのアグフア、日本の富士フイルムの3つがあったが、その中で小津がアグフアを選んだ理由は赤の発色の良さであり、かねてから小津のためのカラーフィルム選定をしていたカメラマンの厚田雄春がドイツ映画『枯葉』(監督ヴォルフガング・シュタウテ、1957年)を見てアグフアカラーの色の良さを気に入り、小津も同感して決めた。作品中でも小道具としてさりげなく赤いやかんが用いられている。また、料亭の場面などで使われた器や茶碗、装飾品類はすべて本物の書画骨董であり、総額は2,000万円にも上った。
(ウィキペディアより)
笠智衆が劇中歌う詩吟は、楠木正行(くすのき まさつら)の辞世の句。(「辞世の句」とは、人が死の間際に詠む漢詩・和歌・俳句などのこと)
続く、中村伸郎が『桜井の訣別』を歌い、皆が口ずさむ。(佐分利信がラスト口ずさむのもこの歌。)歌詞では、鎌倉時代末期の名武将・楠木正成(まさしげ)とその息子・正行にまつわる伝承「桜井の別れ」が描写されている。現在の兵庫県神戸市にある湊川神社では、正成・正季兄弟終焉の地として楠木一族が祭神に祀られている。
『桜井の訣別』
【歌詞1番のみ記載(15番まである)明治32年(1899年)に発表された日本の唱歌。桜井は現、大阪府島本町】
青葉茂れる桜井の
里のわたりの夕まぐれ
木(こ)の下陰(したかげ)に駒とめて
世の行く末をつくづくと
忍ぶ鎧の袖の上(え)に
散るは涙かはた露か
(「世界の民謡・童謡」より)
一言あらすじ
平山(佐分利信)と妻・清子(田中絹代)は娘・節子(有馬稲子)にそろそろ縁談でもと考えていた矢先、突然平山の会社に谷口(佐田啓二)という男がやってきて、節子と結婚させてほしいと言われるが・・・
感想
娘を嫁に出す父と母。
特に、父。
『お茶漬けの味』(1952)では
気の優しい夫役だった佐分利信さんが
今度は娘や妻には
頑固一徹な父親に!!
他人の子には理解あるおじさんだが、
自分の子には
そうはいっちゃあいられない!!
なかなか難しいもんですね。
娘も大人なんだから・・・
と、思うが
時代も時代ですしね。
古き良き時代なのかもしれません。
田中絹代さん演じる
妻・清子が
夫であり父親である平山に
素敵に寄り添いながら
優しくまとめます。
しかし、
一度はバシッと
娘のため、言うところは言う!!
素敵な奥様です。
有馬稲子さん&佐田啓二さんが
画になる美男美女カップル!!
(あんまり二人で出て来ないけど)
そして、
佐々木幸子演じる
山本富士子さんもとっても素敵!!
こりゃええわ!ww
大映から
わざわざ引っ張ってきた
甲斐があるってもんじゃないでしょうか。
脇を固める皆さんも素敵。
笠智衆さんの
素敵な歌もあったり、
(『長屋紳士録』(1947)でも歌ってましたね)
『東京暮色』で登場した
中華屋?「珍々軒」がまた登場。
(しかもバックに流れる曲も同じ??)
こだわりの赤も
とてもきれいで、
幸子の着物の帯と裏地の
朱色のような赤が
これまたとっても素敵です!
見どころ満載ですね。
(2022年3月17本目。本年度88本目)
スタッフ
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
原作:里見弴
製作:山内静夫 撮影:厚田雄春 美術:浜田辰雄 編集:浜村義康
音楽:斎藤高順 録音:妹尾芳三郎 照明:青松明 色彩技術:老川元薫
監督助手:山本浩三 撮影助手:川又昂
製作:松竹大船撮影所
他
キャスト
平山渉:佐分利信
平山清子:田中絹代
平山節子:有馬稲子
平山久子:桑野みゆき
谷口正彦:佐田啓二
近藤庄太郎:高橋貞二
三上周吉:笠智衆
三上文子:久我美子
佐々木幸子:山本富士子(大映)
佐々木初:浪花千栄子
長沼一郎:渡辺文雄
河合利彦:中村伸郎
堀江平之助:北竜二
「若松」の女将:高橋とよ
女給・アケミ:桜むつ子
派出婦・富沢:長岡輝子
曽我良造:十朱久雄
列車給仕:須賀不二男
同窓生・菅井:菅原通済
同窓生・中西:江川宇礼雄
林:竹田法一
同窓生:小林十九二
河合伴子(花嫁):清川晶子
バーテン:末永功
他