鑑賞記録(2022.6.27)
シャンタル・アケルマン映画祭!
シャンタル・アケルマン監督
『私、あなた、彼、彼女』1974
@Cinema KOBE
『私、あなた、彼、彼女』1974/86分/ベルギー・フランス/モノクロ
撮影当時24歳だったアケルマンによる”私”のポートレイト。殺風景な空間と単調な行為が彼女の閉塞感や孤独を際立たせ、激しく身体を重ね合うことで悦びがドラマティックに表現される。観客は彼女の道程を緊張感を持って見つめることによって、その”時間”を彼女と共有する。(『シャンタル・アケルマン映画祭』チラシより)
ポートレートとは(portrait)
肖像、肖像画のことだが、写真の分野では人物写真、肖像写真のことで、人物の風貌(ふうぼう)描写を通して、個性や性格を表現するのを目的とする。日本では女性ポートレートが独立した分野として認められており、女性美のなかの官能性を強調することに力点が置かれている。(日本大百科全書「ニッポニカ」ポートレート解説より一部抜粋)
デジタルリマスター版 シャンタル・アケルマン映画祭 5作品
私、あなた、彼、彼女(1974)
ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地(1975)
アンナの出会い(1978)
囚われの女(2000)
オルメイヤ―の阿房宮(2011)
シャンタル・アケルマン(Chantal Akerman)
1950年6月6日、ベルギーのブリュッセルに生まれる。両親は二人ともユダヤ人で、母方の祖父母はポーランドの強制収容所で死去。母親は生き残ったのだという。女性でありユダヤ人でありバイセクシャルでもあったアケルマンは15歳の時にジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』を観たことをきっかけに映画の道を志し、18歳の時に自ら主演を務めた短編『街をぶっ飛ばせ』(68)を初監督。その後ニューヨークにわたり、初めての長編『ホテル・モンタレー』(72)や『部屋』(72)などを手掛ける。ベルギーに戻って撮った『私、あなた、彼、彼女』(74)は批評家の間で高い評価を得た。25歳のときに平凡な主婦の日常を描いた3時間を超える『ジャンヌ・ディエルマンブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番』を発表、世界中に衝撃を与える。その後もミュージカル・コメディ『ゴールデン・エイティーズ』(86)や『囚われの女』(99)、『オルメイヤーの阿房宮』(2011)などの文芸作、『東から』(93)、『南』(99)、『向こう側から』(2002)といったドキュメンタリーなど、ジャンル、形式にこだわらず数々の意欲作を世に放つ。母親との対話を中心としたドキュメンタリー『NoHome Movie』(2015)を編集中に母が他界。同作完成後の2015年10月、パリで逝去。(『シャンタル・アケルマン映画祭』チラシより)
原題
Je, tu, il, elle
あらすじ
アケルマン自身が演じる名もなき若い女がひとり、部屋で家具を動かし手紙を書き、裸で砂糖をむさぼる。部屋を出た彼女はトラック運転手と行動を共にし、訪れた家で女性と愛を交わす……。(『シャンタル・アケルマン映画祭』チラシより)
感想
ただただ
彼女の部屋にて
家具を廊下に出して
マットレスひとつになった
小さな部屋で
手紙を書き、書き、
服を脱ぎ、裸になり、
砂糖を舐めては
横になり、考える・・・
ひたすらに・・・・
外の景色を眺め、
また横になる・・・
起き上がる・・・
砂糖をむさぼる・・・
その時間は何を物語るのか
状況は一人称で語られていき、
それは彼女の詩とも
言えるのかもしれない
そこから、外へ出る・・・
ヒッチハイクしたトラックに乗り、
食堂でテレビを見ながら
運転手の彼とふたりで食事
バーで飲み、
また移動する。
話すのは、
トラックの運転手の彼だけ。
沈黙の時間も多いが、
そのことに
居心地の悪さはない。
そして目的地へたどり着く。
彼女。
パンを食べ、
ワインを飲み
ただひたすらに
身体を重ねる・・・
ただただ
場面場面で
同じような時間が
自然の法則の運動であるが如く
繰り返し繰り返し
流れていく・・・
しかし、
似てはいるが
時は流れ、
ほんの少しずつ変化し
まったく同じではない・・・
淡々と
延々と
映し出されるその行為を
ただ見つめていく・・・
エンタメとは真逆の映画。
モノクロの映像が
より客観性と詩的な時間を
強調するように感じた。
(2022年6月34本目。本年度220本目、映画館98本目)
スタッフ
監督・脚本:シャンタル・アケルマン
撮影:ベネディクト・デルサル
キャスト
シャンタル・アケルマン
クレール・ワティオン
ニエル・アレストリュプ