鑑賞記録(2022.3.2)
小津安二郎監督 異色作!
『風の中の牝雞』1948
『風の中の牝雞』(かぜのなかのめんどり)1948/83分/日本/モノクロ・スタンダード
U-NEXTの視聴期限(2022年3月末)のため、鑑賞。→追記:期限無くなってました!
小津安二郎監督、戦後2作目。
本作は小津が畏敬した志賀直哉の『暗夜行路』をモチーフにしていると目されている。
小津の作品としては例外的な暴力表現の場面も登場する。このシーンでは、小津作品で唯一スタントが使われている。
公開後の評判は芳しくなく、小津が時流に迎合した一作として批判され、一般には失敗作と見なされている。脚本の斎藤は後年のインタビューで「戦争が悪いとあからさまに言うのではなく、敗戦の世相のようなものをちょっと入れたいなと感じていた。そこをもう少し突っ込んでもらいたかった」という内容の発言をしている。小津も「作品というものには、必ず必敗作(ママ)があるね、それが自分にプラスする失敗ならいいんだ。しかし、この『牝雞』はあまりいい失敗作ではなかったね」と後に語り、納得のゆく作品ではないことを自ら認めている。
脚本家の野田高梧は本作について「現象的な世相を扱っている点やその扱い方が僕には同感出来なかった」と述べた。この批判を受け入れた小津は、もっと別の世界を描こうと、野田と共に次回作『晩春』の脚本を手がけることとなる。
(ウィキペディアより)
ちなみに、黒沢清監督は『黒沢清、21世紀の映画を語る』で本作を大絶賛している。
受賞
第3回毎日映画コンクール(1948)
女優演技賞(田中絹代)・美術賞(浜田辰雄)
第22回キネマ旬報ベストテン 第7位(1948)
一言あらすじ
太平洋戦争後の東京。夫・雨宮(佐野周二)の帰りを待つ妻・時子(田中絹代)が、生活が困窮しているところに、子どもが病気に掛かり、入院費の工面をするために一度だけ身体を売る。その数日後に雨宮が帰還し・・・
感想
本作は、
脚本家・野田高梧が
上記のように批判した
ということを知っていたので、
私の中で、
それがひっかかってしまい
観るのを後回しにしていたが、
今回、視聴期限が迫るとあって、
一体、何がダメと言われているのか??
ということも知りたくて、
観ることにした。
いや~、
やっぱり先入観は入れたくないなぁ
と、思う私です。
事前情報入れちゃうと、
純粋に観れないところが
どうしても出てきてしまう気がする。
それでもとにかく鑑賞。
たしかにお話は、
誰も悪くないように思えるし、
どうしようもないことだったと思う。
母が子を思えば、
わが身を捨てても救おうとするのが
自然だろう。
時子が
子どもが寝ている時に
独り言として
結構内心を話すのは、
小津作品にしては異例かなとも思った。
一番異例とされているのは、
暴力的なシーンだが
確かにちょっと衝撃!!
台詞も結構スゴイ・・・
時子が雨宮に訴える言葉は
ある意味狂気的に聞こえる・・・
やはりいつもと
何やら雰囲気が違うと思うが、
それは私が、
この作品の後に作られる映画を
先に観ているからであって、
(この後『晩春』から、本格的に脚本は野田高梧と共作)
もし先に本作を観ていたら
どう思ったかわかりません。
小津監督作品は
個人的には
何回も見直したいと思う。
でも、正直、
めっちゃ面白いから!!
というより、
勉強のための側面が大きいかな。
今は。ww
(歳を重ねるごとに理解が深まりそうな小津作品です)
派手ではなく、
でも家族には結構大きな変化などが
細やかに描かれている作品が多い
と、思うので。
小津作品のその辺の
微妙でありながら
とてもよくわかる脚本は
やはり秀逸かと。
家族の話って普遍的だから
今観ても、本当によくわかる。
本作は、
異色の異例作と言われていますが、
またそういったものを観るのも
面白いですね。
(2022年3月2本目。本年度73本目)
スタッフ
監督:小津安二郎
脚本:笠智衆、小津安二郎
撮影:厚田雄春 音楽:伊藤宣ニ 美術:浜田辰雄 編集:浜村義康 製作:久保光三
他
キャスト
雨宮修一:佐野周二
時子:田中絹代
井田秋子:村田知英子
佐竹和一郎:笠智衆
酒井彦三:坂本武
つね:高松栄子
野間織江:水上令子
小野田房子(若い娼婦):文谷千代子
医師:長尾敏之助:
巡査:中川健三
女将:岡村文子
古川:清水一郎
男A:三井弘次
男B:手代木国男
看護婦A:谷よしの
看護婦B:泉啓子
看護婦C:中山さかえ
時子の子(浩):中川秀人
彦三の子(あや子):長船フジヨ
正一:青木放屁
他