鑑賞記録(2022.3.18)
木下惠介監督
『陸軍』1944
『陸軍』1944/87分/日本/モノクロ・スタンダード
1944年(昭和19年)公開。木下惠介監督の第4作。木下が戦中に撮った4本中、最後の作品。
戦時下(第二次世界大戦)に、陸軍省の依頼で製作されたもの。作品の冒頭に「陸軍省後援 情報局國民映画」という表記がある。太平洋戦争の開戦日からほぼ3周年にあたる日に公開された。
『朝日新聞』に連載された火野葦平の同題名の小説を原作。(中略)小説は対米英戦争におけるフィリピン攻略戦までを描いているが、映画では上海事変までを扱っている。
(中略)細部の描写はときどきその本来の目的(戦意高揚意識)を逸脱しがちであり、最後のシークエンスで大きく違う方向へと展開する。その場面を見る限り、この作品を国策映画と呼ぶことは難しい。結果として、木下は情報局から「にらまれ(当人談)」終戦時まで仕事が出来なくなったと言われている。このために木下は松竹に辞表を提出しており、原恵一監督による2013年の映画『はじまりのみち』はその前後の出来事を基にしている。
(ウィキペディアより引用抜粋)
戦時中の日本は1939年(昭和14年~昭和20年/1945年12月26日廃止)に制定された映画法で、すべての映画製作が内閣情報局の指導下に置かれ、それまで年500本作られていた劇映画は1945年には20数本となった。かわりに増えたのは戦争映画である。(堕落論、白痴【まんがで読破】P.48から引用抜粋 ※年月日を当方で訂正して記載しています。恐らく昭和と西暦の間違いと思われる)
一言あらすじ
幕末から日清・日露の両戦争を経て満州事変・上海事変に至る60年あまりを、ある家族の3代にわたる姿を通して描いた作品である。(ウィキペディアより)
感想
戦時下に陸軍省からの依頼で
製作されたとあって
戦争に対して肯定的な意見を述べることが
必須とされたはずの本作。
確かに、
日本が戦争に勝つこと、
戦争で死ぬことの正当性などを
登場人物が発言している。
しかし、
ところどころ
それに反する言葉があったり
(基本的にはそれを否定する台詞も付けられるが)
完全完璧に肯定しているわけではないから
これでOK出たんだ~
結構、寛容だな~
(もっと戦争肯定しろという意味ではないヨ!)
なんて思って観ていた。
ちとネタばれですが・・・・
特に、
ラストシーンは有名で
母を演じる田中絹代さんが
出征する息子を
泣きながらも、
行けるところまで追いかけていくシーンは
その前の場面まである程度、
客観的に観ていた節があったけれど
ホロリと来ました。
そして、
プロパガンダ映画だからか、
出征する兵隊さんの行進は圧巻。
物凄い人数のエキストラです。
観終わって、改めて
よくOKだったな~
(特にラスト)
なんて思って後から調べたら、
やはり木下監督
当局から睨まれたとの事!!
やっぱり・・・!!爆
木下監督も
十分そういった状況を
理解していたでしょうから、
一応はそれらしく作るものの、
最後の部分は
木下監督の信念が伺えます。
大きな力に
反抗することになる覚悟で
撮ったであろう本作。
監督の覚悟。
そういった思想があってこそ
歴史に残る映画になっていくのだと思います。
戦争云々の思想だけでなく、
人生においてテーマとなる問題を
問いかける映画は
いつまでも多くの人を
惹きつけるのではないでしょうか。
(2022年3月25本目。本年度96本目)
スタッフ
監督(演出と表記されている):木下惠介
原作:火野葦平
脚色:池田忠雄
撮影:武富善男 美術:本木勇 録音:小尾幸魚
企画:池田一夫 製作担当:安田健一郎 製作:松竹大船撮影所 後援:陸軍省
他
キャスト
友助 ・友彦… 笠智衆
わか(友彦の妻)… 田中絹代
櫻木常三郎 … 東野英治郎
仁科大尉(友彦の戦友)… 上原謙
友之丞(成長後)… 三津田健(文学座)
せつ(友之丞の妻)… 杉村春子(文学座)
伸太郎(友彦の息子)… 星野和正(東童)
藤田謙朴 … 長濱藤夫(東宝劇団)
他