鑑賞記録(2022.1.6)溝口健二監督『愛怨峡』1937 Amazon Prime Video/ちょこっとフィルムのお話

鑑賞記録(2022.1.6)

『愛怨峡』(あいえんきょう)

Amazon Prime Video

『愛怨峡』1937/88分(Amazon Prime Video版)/日本/モノクロ

レフ・トルストイの小説『復活』を川口松太郎が翻案し、溝口健二監督が映画化。

 

受賞

1937年度 第14回キネマ旬報賞 (日本映画ベスト・テン3位)

 

一言あらすじ

信州の旅館の女中おふみ(山路ふみ子)は、旅館の跡取り息子謙吉(清水将夫)との間に子を身籠るが、謙吉の不義理から、ひとり子を産むことに。なんとか子供を育てるためにさまざまな仕事をして奮闘するおふみと、それを支える芳太郎(河津清三郎)。そんな中、謙吉と再会するが・・・

 

感想

母となる女性の強さよ。

 

子を産む前と、後のおふみの別人っぷり。

 

同じ人物とは思えないほどの

たくましさと、強さを身につける。

 

しかし、これは

現実の厳しさゆえ

変わらざるをえなかったもの。

 

変化は辛さに比例する。

 

しかし、母は子のためなら

鬼にでもなる、ということだろう。

 

 

そこへきて

跡取りボンボンのダメさったらない!!

 

これは観たらわかるから

もはやつらつらと言うまいが・・・

 

根が悪いわけではないが、

まぁ本当にいただけない!!笑

 

 

そんな男に惚れてしまった

ウブなおふみの運命ですかね・・・

 

 

そこへ謙吉とは正反対の

心意気男!の芳太郎。

 

彼には相当助けられる。

 

 

しかし人生上手くいかないもんだ。

 

 

男女の事になると

余計に話がややこしくなる。

 

 

まぁ現実もそうですからね。笑

 

 

話は変わって、

溝口監督の十八番の長回しがやはりいい。

 

流れるように移動していくカメラワーク。

 

やっぱり素晴らしい。

 

 

今回はビックリするほど長い!!

って部分はそこまで感じなかったけど、

頻繁に長めのショットは入っている。

 

 

同監督作『祇園の姉妹』(1936)

を、初めて観た時に

溝口長回しにビビって以来

ちょっとだけ

慣れてきているのかもしれない。笑

 

しかし、素晴らしい。

 

 

溝口健二監督は

特にヨーロッパでの評価が高いらしく

もっと知りたい名匠の一人ですね。

 

スタッフ

監督:溝口健二

脚本:依田義賢、溝口健二

原作:川口松太郎 (原案:レフ・トルストイ『復活』)

音楽:宇賀神味津男 撮影:三木稔 編集:板根田鶴子、近藤光夫 美術監督:水谷浩 録音:安藤彰、灘源太郎 照明:内田昌夫、阿部定雄 製作会社&配給:新興キネマ(東京大泉撮影所)

キャスト

山路ふみ子、河津清三郎、清水将夫、三桝豊、加藤精一、田中春男、野辺かほる、浦辺粂子、他

 

 

ちょこっとフィルムのお話

本来、この作品は

上映時間は108分らしいけど、

 

Amazon Prime Videoの再生時間は

88分となっている。

 

20分ほどカットになってしまっているようだ。

 

確かに途中明らかに飛んでるシーンがあった。

 

 

こちらの作品は、

長らくフィルムの所在が知れなかった

幻のフィルムで、

完全ではないが発見された、との事。

 

(なるほど、だからかな)

 

 

そのためか、中々に

フィルムの傷みが激しい(特に前半)。

 

 

ちなみに、フィルムの構造上、

クルクル巻いてあるから、

 

基本的に外側にあたる

最初(ストーリー前半)の方が

損傷が激しくなる可能性が高い。

 

 

内側(後半)に当たる部分は守られて

傷が付きにくくはなる。

 

もちろん保存状態によるが。

 

フィルムが見つかったことにより

奇跡的に拝める作品なので

大変貴重!

 

ありがたや。

 

 

日本は特に、

フィルムを残しておく文化が基本なかったこと、

戦争になって、燃料がなくなり、

よく燃えるフィルムは、

燃料代わりに使われ、燃やされたこと

などで

残されている古いフィルムが少ない

 

と、言うような事を聞いたことがある。

(真偽は知らないが)

 

生き残っているフィルムは大事にして頂きたいですね!