鑑賞記録(2022.4.26)アスガー・ファルハディ監督『英雄の証明』2021@シネ・リーブル神戸

鑑賞記録(2022.4.26)

アスガー・ファルハディ監督

『英雄の証明』2021

シネ・リーブル神戸

 

『英雄の証明』2021/127分/イラン・フランス/ペルシア語/カラー/2.39:1/5.1ch

アスガー・ファルハディ監督の受賞歴(一部)

2009年 ベルリン国祭映画祭『彼女が消えた浜辺』銀熊賞(監督賞)

2011年 ベルリン国際映画祭『別離』金熊賞(最優秀作品賞)

2012年 アカデミー賞 外国語映画賞 『別離』

2016年 アカデミー賞 外国語映画賞『セールスマン』

 

受賞

カンヌ国際映画祭(第74回、2021年)

コンペティション部門 グランプリ(審査員特別賞)

 

一言あらすじ

借金の返済が出来ず訴えられて服役中のラヒム(アミル・ジャディディ)。そんな中、彼の婚約者ファルコンデ(サハル・ゴルデュースト)が偶然大量の金貨の入った鞄を拾う。休暇で一旦出所したラヒムは、彼女から金貨を受け取り、一度は借金返済に充てようとするが、罪悪感から持ち主を探し、返却することに。そのことが知れ渡り、大きく報道されていくのだが・・・

 

感想

真実という真水に

 

小さな嘘という黒い雫を

一滴でも垂らしたら、

 

その見た目はもう

 

透明ではなくなる。

 

 

たとえ元は真水だったとしても・・・

 

 

元の姿を信じる人は

ほとんどいなくなるだろう・・・

 

 

真水であったころを知る人以外は・・・

 

 

 

人は良いけど、

ぶっちゃけ

なんとも要領の悪いラヒム・・・

 

 

お人好しだから、

つい周りに言われるがまま

事が運ばれてしまう・・・

 

 

 

服役中という言葉が

全く似合わない男・・・

 

 

 

彼が

 

もう少し運?が良ければ・・・

 

もう少し機転が利けば・・・

 

 

 

正直、観ていて

ちょっとイラついてしまうほど

(私の気が短いというのもあるw)

 

対応が後手後手で・・・汗

 

 

それはやっちゃあいかんのではー、、、

という場面に度々遭遇するが、

 

 

なんとかギリギリのところで

タイミングや素直さが功を奏し、

なんとかなっていたが・・・・

 

 

 

 

(↓ネタばれあり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”正直者の囚人”と

メディアやSNSを中心に

もてはやされたのも束の間、

 

 

今度は作り話じゃないかと

疑われ始める・・・

 

 

 

確かに

報道されたことの一部が

実際とは違っていた。

 

 

 

しかし、

 

金貨を返したことは本当だ!!

 

 

信じてもらえなくなった時、

 

何とか信じてもらうために、

 

嘘をついてしまう・・・

 

 

その嘘が、

真実までも覆すほどの

大波を連れてやってくる・・・

 

 

またもや

メディアやSNSで大騒ぎに。

 

 

もてはやされたら

つい調子に乗っちゃうのもわかるし、

 

何とか信じてほしいがために

 

これぐらいなら・・・と

嘘をついてでも

なんとかしたくなる気持ちもわかるが・・・

 

 

 

どんどん自分に

不利な状況を作ってしまうラヒム・・・

 

 

 

 

刑務所長と口論の際、

「おまえは意外とバカだ!」

と言われ、

 

「だから刑務所にいるんです!」

と、答えるラヒム・・・

 

 

 

そ、それはわかってるんだ・・・爆

(と、心の中でつっこんだが・・・)

 

 

 

しかし、

 

ラヒムに代わり鞄を実際に渡した姉、

その現場にいた

息子(元妻との子)と、姉の娘。

 

鞄を受け取った女性、

その女性を運んだタクシーの運転手。

 

そして、婚約者と義兄。

 

 

彼らは真実を知っている。

 

 

 

 

ラスト、

 

刑務所長が

(刑務所も汚名返上したい)

 

吃音症のラヒムの息子を使い

世間に訴えかけようと

動画を撮影する。

 

 

またもメディアやSNS。

 

 

いつもながら、

最初は言われるがまま

成り行きを見守っていたラヒムだが

 

息子を晒し者に出来ない!と、

 

自分(と刑務所)の名誉挽回よりも、

息子を守る(動画を消去する)ことを

半ば力ずくで選ぶ。

 

 

 

おそらく彼はその後も

疑念をかけられ、

 

行った善行は、評価どころか

嘘つき呼ばわりされるだろう。。。

 

 

 

しかし、

 

最後は、

 

自分の名誉よりも

息子を守った。

 

 

 

そしてまた、

ラヒムは刑務所に戻っていく・・・

 

 

メディアやSNSに翻弄された

ラヒムとその家族たち。

 

 

 

誰しもが大なり小なり

持つであろう

 

金銭欲、承認欲、

障害回避欲、優越欲・・・

 

 

それらがほんの少し

顔をのぞかせる瞬間

歯車が狂いだすかもしれない。

 

 

 

メディアやSNSを介した途端、

 

真実が嘘にもなり得る・・・

 

 

 

ラヒムの表情からは笑顔が消え、

 

家族の目からは涙が零れる。

 

 

ラヒムに代わって

機転の効く婚約者と

家族の存在が

唯一の救いかもしれない。

 

 

 

真実を知ること、伝えることって

とても難しいのかもしれませんね。

 

 

 

人事と思わず、

心に留めておかなくては・・・

と思います。

 

 

 

 

P.S.

 

日本では、

当たり前とされる

最初から警察に届ければよかったよね??

という感覚は、

異国では通用しないという前提で・・・w

(多分、日本の方が特殊ww)

 

 

(2022年4月29本目。本年度139本目、映画館52本目)

 

 

スタッフ

監督・脚本:アスガー・ファルハディ

撮影:アリ・ガーズィー、アラッシュ・ラメザニ 編集:ハイデー・サフィヤリ

美術:メーディ・ムサビ 衣装:ネガル・ネマティ

製作:アレクサンドル・マレ=ギィ、アスガー・ファルハディ

製作会社:メメント・フィルムズ 配給:シンカ

 

キャスト

ラヒム・ソルタニ:アミール・ジャディディ

バーラム:モーセン・タナバンデ

ファルコンデ:サハル・ゴルデュースト

マリ:マルヤム・シャーダイ

ホセイン:アリレザ・ジャハンディデ

シアヴァシュ:サレー・カリマイ

マザニン:サリナ・ファルハディ