鑑賞記録(2022.9.30)
山中貞雄監督
『人情紙風船』
1937
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『人情紙風船』1937/85分/日本/モノクロ
日中戦争で戦病死した(28歳)山中の遺作である。(年齢補足)
河竹黙阿弥作の歌舞伎『梅雨小袖昔八丈』(「つゆこそでむかしはちじょう」通称:『髪結新三』)を原作とし、山中の盟友である三村伸太郎がシナリオを執筆した。『街の入墨者』『河内山宗俊』に次いで前進座と三度目のコンビを組み、一座の花形である河原崎長十郎と中村翫右衛門が主演し、ほか多くの座員が出演した。また、当時前進座に所属していた加東大介が市川莚司名義で、河野秋武が山崎進蔵名義で出演している。
山中は戦中、手記に「紙風船が遺作とはチト、サビシイ」と書き遺している。山中は1938年(昭和13年)9月17日に河南省で戦病死した。
(↑ウィキペディアより)
キネマ旬報「日本映画オールタイムベストテン」4位に選出された大傑作。(中略:あらすじ)脚本の三村は海野を楽天家に設定していたが、山中は海野の性格をまったく反対にし、この作品の厭世感を体現する人物に描いた。それはまるで自らの運命を予見していたかのように、映画が完成した日に赤紙が撮影所に届く。わずか翌年、中国戦線で戦病死。「これが遺作とは、ちと寂しい」山中の無念さが胸に迫る。(シネ・ヌーヴォ公式サイトより)
あらすじ
江戸の貧乏長屋。仕官する日を夢見て妻と二人貧しい生活に耐えていた海野又十郎は、同じ長屋の住人・髪結新三が白子屋の娘を誘拐してきたことから、その片棒を担いでしまい…。紙風船のようにわずかな風に翻弄される市井の人々を描いた名作。(シネ・ヌーヴォ公式サイトより)
感想
先日まで、
シネ・ヌーヴォさんで
(大阪・九条)
4K(2K)デジタル修復版が
上映されていた
山中貞雄監督、3作品。
『丹下左膳餘話 百萬両の壺』(1935)
『河内山宗俊』(1936)
『人情紙風船』(1937)
山中監督作品、
現存するのが、この3作品のみ。
シネ・ヌーヴォさんに
足を運ぶことが出来ず、
先日自宅鑑賞した
『河内山宗俊』(1936)
に、引き続き、
観ていない本作を
自宅鑑賞、その②。
『河内山宗俊』(1936)
と同じく
河原崎長十郎さん(海野又十郎)と
山岸しづ江さん(おたき)が夫婦、
中村翫右衛門さん(髪結新三)が
メインどころ。
以下、ネタバレあり・・・
江戸の貧乏長屋で
浪人の首吊りが発生という
不幸な事件からお話が始まるが、
暗い雰囲気はほぼ皆無・・・w
なぜなら
長屋の住人である髪結の新三が
言い出しっぺで
お通夜と称して
大家を説き伏せて酒をせしめ、
長屋の連中は酒が飲めると喜び
陽気な馬鹿騒ぎを行う。
なんとも陽気なお通夜となっている!爆
こんな祭り調子の
『南無妙法蓮華経』を
初めて聞いた!!!ww
こんな調子で歌えば、
『南無妙法蓮華経』も
踊り出すような
音頭になっちゃいます!
超絶ブラック・・・!!
不謹慎と思われたら
すみませんが、、、
個人的には
面白過ぎましたね・・・爆
ブラックユーモア炸裂です!
しかし、
これまた前作と同じく、
前半のこのユーモアが、
間にあーだこーだと
色々ありつつ・・・
終盤、
一気に空気が一転します・・・冷
前半から
山岸しづ江さん演じる
又十郎の女房おたきの
疲れ果てているかのような
ただならぬ雰囲気・・・
河原崎長十郎さん演じる
又十郎も、
うまくいっていないことを
心配させないための嘘
だったのかもしれませんが、
その嘘が
不信感と先の無さに
繋がってしまう様・・・
正直、簡単にボロが出る嘘は
如何かと思いますが、、、
まさかの結末に・・・・
ほんの小さなきっかけと、
ほんの小さな出来事で、
溜まりに溜め込み
抑え込んでいた気持ちが
一気に流れ出る・・・
紙風船のように
簡単に潰れ、破れてしまう・・・
ふっと吹けば飛んで、
コロコロと転がり、
流れる川に落ちて
流されていく紙風船・・・
風や川の流れに
逆らうことなど出来ずに
為されるがまま・・・
あまりにも悲しいことに・・・
そして、
本作が遺作となった
山中貞雄監督作。
ユーモアを交えながらも、
どうにもならない状況や
追い詰められた人の様は
ハッキリと
過酷な現実を
抜き取っている。
ふと思ったのは、
現実に”もしも”はありませんが、
もし
本作が遺作になるかもしれない
とわかったとしたら、
結末は変わっていたかも・・・??
なんて勝手な想像をする私でした。
(「チト、サビシイ」という言葉から勝手な想像)
結局
もしも、はないので、
本作が出来上がり、
そして残っているのだけれど。
また時間を置いて、
再鑑賞したいと思う作品です。
(2022年9月39本目。本年度353本目)
スタッフ
監督:山中貞雄
脚本:三村伸太郎
原作:河竹黙阿弥(『梅雨小袖昔八丈』、通称『髪結新三』)
撮影:三村明
録音:安恵重遠
美術装置:久保一雄
美術考証:岩田専太郎
編集:岩下広一
音楽:太田忠
演奏:P.C.L管弦楽団
製作:武山政信
他
キャスト
海野又十郎:河原崎長十郎
髪結新三:中村翫右衛門
又十郎の女房おたき:山岸しづ江
白子屋の娘お駒:霧立のぼる
弥太五郎源七:市川笑太朗
百蔵:市川莚司(加東大介)
忠七:瀬川菊之丞
白子屋久左衛門:御橋公
金魚売源公:中村鶴蔵
按摩藪市:板東調右衛門
目明し弥吉:市川楽三郎
錠前屋の兼吉:市川菊之助
徳兵衛:山崎長兵衛
夜そば屋の甚吉:中村進五郎
吉兵衛:板東みのる
役人:市川章次
流しの与吉:中村公三郎
家主長兵衛:助高屋助蔵
平六:嵐敏夫
長松:市川扇升
白子屋久兵衛:嵐芳三郎
磨師の卯之公:沢村比呂志
古傘買いの乙松:市川岩五郎
猪助:山崎進蔵
毛利三左衛門:橘小三郎
乙松の女房おくま:岬たか子
源公の女房おてつ:原緋紗子
久兵衛の女房おなつ:岩田富貴子
甚七の女房おちよ:一ノ瀬ゆう子