鑑賞記録(2022.9.21)セリーヌ・シアマ監督『燃ゆる女の肖像』2019 U-NEXT

鑑賞記録(2022.9.21)

セリーヌ・シアマ監督

燃ゆる女の肖像』2019

U-NEXT

 

『燃ゆる女の肖像』2019/121分/フランス/カラー

第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルムの2冠に輝いたほか、世界中の数多くの映画賞を受賞し、LGBT映画の新たな聖典として高い評価を得ている。

カンヌ国際映画祭 クィア・パルム (La Queer Palm) は、カンヌ国際映画祭の独立賞のひとつ。LGBTやクィアをテーマにした映画に与えられる。女性監督として初めてクィア・パルム賞を受賞した。

監督セリーヌ・シアマは、女優のアデル・エネルと暮らしていたが、『燃ゆる女の肖像』の撮影前に友好的に破局する。(監督は別離後に、彼女に新境地をひらいてほしいと本作をあて書きしたというエピソードも話題だ。※()内のみ、公式サイトより)

主要な撮影は、2018年10月からブルターニュのサン=ピエール=キブロンとセーヌ=エ=マルヌ県のラ・シャペル・ゴーティエにある城などで38日間かけて行われた。

映画に登場する絵画やスケッチは、アーティストのエレーヌ・デルメールが描いている。デルメールは撮影期間中、映画のシーンに基づいて毎日16時間制作し、劇中にはデルメールの手も登場している。

(↑ウィキペディアより。一部引用)

 

原題

Portrait de la jeune fille en feu

(英題:Portrait of a lady on fire)

 

一言あらすじ

18世紀、フランス、ブルターニュの孤島。望まぬ結婚を控える貴族の娘と、彼女の肖像を描く女性画家。結ばれるはずのない運命の下、一時の恋が永遠に燃え上がるー公式サイトより)

 

感想

明日から公開の

 

セリーヌ・シアマ監督最新作

『秘密の森の、その向こう』(2021)

の鑑賞を考えており、

 

 

その前に、

話題だった本作を

鑑賞しておこうと思って。

 

 

 

セリーヌ・シアマ監督作は昨年、

シネ・リーブル神戸さんで上映された

 

長編第2作目の『トムボーイ』(2011)

鑑賞したが、

(この時は、まだ記録付けておらず)

 

 

とても印象的だった記憶があった。

 

 

 

監督がそうだからか、

 

基本的に、

ジェンダーレスなお話。

 

 

大抵の監督はそうですね。

 

 

実際にそうじゃないと

繊細な部分など

描けないこともあるとも思う。

 

 

 

今でこそ、

同性愛も認知されてきている世の中なので、

 

私としても、

 

別段これが異性同士の話だろうが、

同性同士の話だろうが、

 

 

恋愛の話に違いないと思うが、

 

 

時代が違えば

やはり困難な壁は高くなったことだろう。

 

 

 

女性というだけで、

画家として才能があっても

活躍できなかったり、

 

もちろん同性同士の恋愛も

ご法度だったろう。

 

 

宗教的に禁じられている国も

あった(ある)だろうし。

 

 

などなど、

LGBTQに関しては、

色々見解があるだろうが、

 

 

ここは単純に作品に対して

感想を。

 

 

 

以下、ネタバレあり・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

まず

始まりがとても好み。

 

 

一瞬、引かれる線と

クレジットが

交互にカットされていく。

 

色も好き。

 

 

そして、

音楽を多用していない点も

自然で好きな印象。

 

 

この時代と

美しい自然の風景、

 

人物たちだけで

語られる物語。

 

 

真っ青な海と

そのまま繋がるような澄んだ空。

 

 

草が生い茂る自然などが

とても豊かで、

 

美しかったです。

 

 

自宅でこの美しさだから、

映画館で観たら

もっと美しかっただろうな〜と。

 

 

 

あとは、

印象的な場面がいくつか。

 

(↓完全ネタバレ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイドのソフィの堕胎シーンで

赤ちゃんが真横にいて、

 

ことを終わらせるという

悲劇的で

 

なんとも言えない

苦しくなるようなシーン。

 

(ちなみに彼女の刺繍、とても素敵で好き。)

 

 

 

そして何と言っても印象的な

 

リアルに燃える

エロイーズのドレスの裾!!

 

 

この象徴的な画は

凄いですね!!

 

 

”足元が燃えるかのような印象”

かと思ったら、

 

印象じゃない!!!爆

 

 

事故的なことだったとしても

 

しかし、

美しく鮮烈な印象を残します。

 

 

 

短いですが、すごいシーンでした。

 

 

序盤でチラッと映る

 

マリアンヌが昔描いた絵が

この瞬間だったのも

 

この映画の象徴的な画と言えるかと。

 

 

2人が時間をかけて

お互いを観察し、

 

ともに惹かれあっていくのは

争いようのない事実。

 

 

それと同時に

 

エロイーズの今後は決められており

変えることはできない・・・

 

 

 

女主人の娘と、

その家のメイド、

そして雇われた画家と

 

3人は身分が違いますが、

 

 

友人のように

楽しい数日間を過ごすことも

 

特にエロイーズの人柄を表しますね。

 

 

身分や性別などでなく、

 

人として付き合うことを

自然と行う人物。

 

 

そんな印象を受けました。

 

 

 

3人で本を読んで、

意見を交わしている題材、

ギリシャ神話のお話も印象的。

 

 

その後のシーンで

そのギリシャ神話を

思い出させるかのように、

 

マリアンヌが

エロイーズを振り返った顔が

とても美しく、

 

消える。

 

 

このシーンも印象的でした。

 

 

 

 

新作も

どんな風に仕上がっているのか

観てみたいと思います。

 

(2022年9月28本目。本年度342本目)

 

 

 

ネタバレMEMO(公式サイト PRODUCTION NOTES より)

奇跡的に見つかった“城”とすべて手作りの衣装
台に使われた城には住人はおらず、修復されたこともなかったため、木造部分や寄木張りの床、色彩などが当時のまま残っていた。この城が映画の核となり、美術チームは家具や小道具、備品、木材、生地などの準備に集中することができた。
シアマ監督は衣装デザイナーのドロテ・ギローと、登場人物ごとの衣装作りに重点的に取り組んだ。衣装にそれぞれの特性を反映させるためには、裁断の仕方や生地、特に重さも重要だった。役柄の社会性や、歴史的事実に関わるだけでなく、締め付けられた衣装を着る女優の演技にも影響するからだ。シアマ監督は、「私はマリアンヌの服には、ポケットが必要だと決めていました。彼女の普段の振る舞いを念頭に置いていたからです。さらに、ポケットがこの世紀の終わりには排除され、女性の衣装から消えてしまうことも大きな理由でした。ポケットのモダンなスタイルが好きだったので、蘇らせたかったのです」と語る。

現代のアーティストが古典技法で仕上げた肖像画
画家の制作プロセス全体を見せるために、絵画を用意する必要があった。シアマ監督は模倣画の作家ではなく、アーティストを探していた。マリアンヌと同じ30歳で、今現在、活躍している画家だ。女性画家に絞って、インスタグラムなどで現代画をリサーチする中で、シアマ監督はエレーヌ・デルメールという画家を見つける。油絵の古典的な技法も学び、19世紀の技法にも精通している画家だ。
編集で合成するのではなく、画家のリアルな動作やリズムを映し出したいというシアマ監督の構想をかなえるために、撮影監督のクレア・マトンは、エレーヌ・デルメールが実際に絵画を制作する様々な段階を、すべて連続で撮影した。その甲斐あって肖像画は、飾りではなく重要な登場人物となり、二人の“ 再会” シーンも彩った。

いつまでも心に響く追憶の曲
本作では音楽は2曲しか使われていない。それも劇伴ではなく、登場人物たちが実際に歌い奏でる音楽だ。まず登場するのは、ヴィヴァルディ協奏曲第2番ト短調 RV 315「夏。マリアンヌが自分の「好きな曲」だと、ほんの一節をエロイーズに弾いてみせ、二人の心が初めて接近する。そして、その思い出の曲がラストシーンで、圧巻のオーケストラによって奏でられる。愛のささやかな芽生えと壮大な喪失が、鮮やかな対比で演出される。
もう1曲は、夜の焚火のシーンで、集まった女性たちが合唱する歌曲「LaJeune Fille en Feu」。18世紀にふさわしい曲を探したが、求めるものが見つからず、『水の中のつぼみ』や『トムボーイ』も手がけたエレクトロニックミュージックのプロデューサー、パラ・ワンを中心にオリジナルで作られた。一度聴けば耳に残る、非常に印象深い歌詞は、シアマ監督がニーチェの詩から引用した歌詞を、ラテン語で書き起こした。
この2曲を3つのシーンだけで使った理由を、シアマ監督は「脚本を書いている時から、音楽なしで作ることを考えていました。基本的には、当時を忠実に再現したかったからです。彼女たちの人生において、音楽は求めながらも遠い存在でしたし、その感覚を観客にも共有してほしかった」と語る。そのためには、シーンのリズムと配置をよく検討しなければならなかった。二人の関係を、体の動きやカメラワークなど、音楽以外のもので表現することになるからだ。「特にこの映画は、ほとんどがワンショットで構成されているため、演出には細心の注意を払いました」とシアマ監督は振り返る。
最後にシアマ監督は、愛の美しさと共に、この映画で伝えたかったもう一つのテーマについて語る。「美術や文学や音楽などのアートこそが、私たちの感情を完全に解放してくれることを描きました」

 

スタッフ

監督・脚本:セリーヌ・シアマ

撮影監督:クレア・マトン

美術:トマ・グレーゾ

衣装:ドロテ・ギロー

編集:ジュリアン・ラシュレー

音楽:ジャン=バティスト・デ・ラウビエ

キャスティング・ディレクター:クリステル・バラ

セット・ディレクター:ドマ・グレゾー

オリジナルスコア:パラ・ワン、アーサー・シモニーニ

サウンド:ジュリアン・シカール、ヴァレリー・ディループ、ダニエル・ソブリノ

プロデューサー:ベネディクト・クーヴルール

キャスト

マリアンヌ:ノエミ・メルラン

エロイーズ:アデル・エネル

ソフィ:ルアナ・バイラミ

伯爵夫人(エロイーズの母):ヴァレリア・ゴリノ