鑑賞記録(2022.5.22)良心なき正義がもたらす結果とは・・・疑う力よりも、信じる力を。ウィリアム・A・ウェルマン監督『牛泥棒』1943@神戸映画資料館

鑑賞記録(2022.5.22)

良心なき正義がもたらす結果とは・・・

疑う力よりも、

信じる力を。

 

ウィリアム・A・ウェルマン監督

牛泥棒』1943

@神戸映画資料館

 

『牛泥棒』1943/75分/アメリカ/モノクロ/16mmフィルム上映(傷みあり)

西部劇の根底を支えている法と正義の正当性を問いただす傑作ウエスタン。バザンが西部劇の古典的完成形と評した『駅馬車』のわずか数年後に撮られたこの名高い作品は、すでにしてバザンの言う〈超西部劇〉を予告している。公開当時その新しさはあまり理解されなかったが、今や西部劇の不滅の傑作としてイーストウッドを始め多くの人から高く評価されている必見作。(井上正昭;2022年5月の神戸映画資料館チラシより、一部抜粋)

 

原題

The Ox-Bow Incident

 

一言あらすじ

1885年、ネバダ州のある町に2人の男がやって来た。ちょうどそのころ、その町の牧場主が殺され、牛が盗まれるという事件が起こり、怒った町の男達は私刑を前提に自警団を組織し、2人の男も同行を頼まれ、犯人探しが始まる。すると、野宿する3人組が見つかり、彼らは牧場主の烙印の押された牛を所持していて、犯人かと思われるも、本人たちは無罪を主張するが・・・

 

感想

今回は、

16mmフィルム上映だったが

 

かなりフィルムの劣化があり、

状態はあまり良くないとの

 

事前説明があり、鑑賞。

 

 

 

昔の作品を

フィルムで観られることが

とても貴重なので、

 

観辛いのは、

もう覚悟です!ww

 

 

 

途中、

やはり中断などがありましたが

 

一応最後まで鑑賞出来ました。w

 

 

 

 

 

(以下、ネタばれあり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お話は、

衝撃かつ恐ろしく、

悲しい結末・・・・

 

 

 

正義を振りかざすことで

 

これが正義だ!と

思い込み、決めつける姿勢が

 

多数に及んだ時、

真実を見つめる力を失ってしまう。

 

 

 

本当の目的はなんだったのか・・・

 

 

 

 

怒りで頭に血が上り、

 

犯人と疑わしき者を

聞く耳持たず、犯人と決め付け

早々に私刑だ!と主張。

 

 

 

 

疑われた者は、

無罪を主張するも、

 

いくつかの不利な状況もあり、

全く聞き入れてもらえない・・・

 

 

 

 

少数派が裁判を主張するも、

 

大多数が

裁判にかけることなく

私刑を実行することを望む。

 

 

 

 

町の男とたちの目的は、

”犯人を見つけ、罪を償わせること”

だが、

 

 

当たり前だが

 

犯人でなければ

償う罪など何もない。

 

 

 

安易な正義と

安易な法。

 

 

そして真の目的は

どこへ行ってしまったのか・・・

 

 

 

 

冤罪の可能性などを無視した

安易な人間の判断。

 

 

 

頭数の多いほうが

 

冷静な少数派の意見を

蹴散らしてしまう。

 

 

 

 

ラスト、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺書を残した無罪の人間は、

 

逆に罪を犯すことになる

 

怒りにまかせ誤りの判断を下した

町の男たちに

 

 

怒りをぶつけたり、

非難することはしない。

 

 

 

ただ、良心無くして

 

正義とは何かを

 

静かに訴えるだけだった。

 

 

 

 

一体どちらが罪人か、

 

言うまでもない。

 

 

 

良心のない行いは、

 

集団になればなるほど

恐ろしい力となってしまう。

 

 

 

 

法や正義は

 

良心無くして成り立たない・・・

 

 

 

何のための

 

法と正義なのか・・・

 

 

 

大切なことは、何なのか。

 

 

 

映画の中で、

 

罪なき者が犠牲を払うことで、

 

 

実際に生きる我々に

 

同じ過ちを犯さないよう

 

警鐘を鳴らす。

 

 

 

人を疑う力より、

 

人を信じる力が

 

どれほどまでに大切か。

 

 

 

重く、

 

しかし人間として

忘れてはならない根本を

 

 

今一度

問いかけてくる一作です。

 

 

 

(2022年5月28本目。本年度173本目、映画館68本目)

 

 

スタッフ

監督:ウィリアム・A・ウェルマン

脚本・製作:ラマー・トロッティ

原作:ウォルター・ヴァン・ティル、バーグ・クラーク

撮影:アーサー・C・ミラー

音楽:シリル・モックリッジ

 

キャスト

ギル・カーター:ヘンリー・フォンダ

ドナルド・マーティン:ダナ・アンドリュース

ローズ・メイペン:メアリー・ベス・ヒューズ

フアン・マルティネス:アンソニー・クイン

ジェラルド・テトリー:ウィリアム・アイス

アート・クロフト:ハリー・モーガン

ママ・グリア:ジェーン・ダーウェル

ダニエル・テイラー判事:マット・ブリッグス

アーサー・デイヴィス:ハリー・ダヴェンポート

テトリー少佐:フランク・コンロイ

ジェフ・ファーンリー:マーク・ローレンス

モンティ・スミス:ポール・ハースト

ダービー(酒屋の主人):ビクター・キリアン

ポンチョ:クリス・ピン・マーティン

保安官:ウィラード・ ロバートソン