鑑賞記録(2022.11.22)山﨑樹一郎監督『やまぶき』2022@元町映画館

鑑賞記録(2022.11.22)

山﨑樹一郎監督

やまぶき』2022

@元町映画館

 

『やまぶき』2022/97分/日本・フランス/カラー/16mm→DCP/5.1ch/1:1.5

本作は、岡山県真庭市の山間で農業に携わりながら、地方に生きる人々に光をあてて映画製作を続ける山﨑樹一郎監督の長編第3作。長編デビュー作『ひかりのおと』(11)では、故郷・岡山に戻り酪農を継ぐ若者の苦悩と葛藤を描き、『新しき民』(15)では江戸時代の農民一揆を題材とし時代劇に挑戦した。『やまぶき』は、再び地元でロケをし初めて16ミリフィルムで撮影に挑んだ野心作だ。

陽の当たりづらい場所にしか咲かぬ野生の花「山吹」をモチーフに、資本主義と家父長制社会の歪みに潜む悲劇と希望を描きだす群像劇。政治的な主題を声高ではなく繊細に描く作風が評価され、今年5月に行われたカンヌ国際映画祭のACID部門に日本映画として初めて選出される快挙を果たしたほか、多数の海外映画祭に招待されている。

本作は、フランスのSurvivance(シュルヴィヴァンス)との国際共同製作によって完成された。『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』(16)でアヌシー国際アニメーション映画祭で2冠を得たセバスチャン・ローデンバックがアニメーションパートを、オリヴィエ・ドゥパリが音楽を担当。また、フランソワ・トリュフォーやモーリス・ピアラ、フィリップ・ガレルなど巨匠監督の作品を手がけた、フランス映画の伝説的な編集マンであるヤン・ドゥデが編集協力をしている。

公式サイト”INTRODUCTION”より)

ヒロインの名前「山吹」は、黄色い花の名前であり、かつては賄賂の隠語でもあった。この意味論的な曖昧さに倣うように、山﨑樹一郎は、不安定で、自由な動きを奪われた世界をつくりだす。金銭とのさまざまな関わりの中で、人間の弱さが顔を出すのだ。カメラのわずかな動きがこの不確かさを表現する。このメランコリックな作品では、すべての技巧に内的な必然性があるようだ。ざらついた16ミリフィルムの撮影によって混濁をさらに深めながら、山﨑は、確かな手つきで、予想外なフレーミングと驚くべきモンタージュでこの曖昧な世界を描いているのだ。   カイエ・デュ・シネマ

(↑公式サイト”REVIEW”より一部抜粋 ※本作のチラシ表記と同じ)

ヤマブキ(山吹)

バラ科ヤマブキ属(本種のみの一属一種)の落葉低木。黄金色に近い黄色の花をつける。春の季語。

ヤマブキの花言葉は、「気品」である。ヤマブキの鮮やかな黄色い花の色は、山吹色という色名のもととなっている

『万葉集』でたびたび登場するほど栽培の歴史は古く、古歌にも好んで詠まれ親しまれてきた。(ウィキペディアより一部抜粋)

 

あらすじ

かつて韓国の乗馬競技のホープだったチャンスは、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。岡山県真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちとともに採石場で働き、日本人の恋人とその娘と慎ましく暮らしている。真面目で誠実な勤務態度が認められ、正社員への道が開けたと思われた矢先、不幸な事故に見舞われてしまう。一方で、刑事の父と二人暮らしの女子高生・山吹は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める。この小さな田舎町でも、声が小さくても、いつか誰かの人生と繋がるかもしれない。その思いは山吹の亡き母から受け継がれたものだった。二人とその周囲の人々の運命は、本人たちの知らぬ間に静かに交錯し始める。(公式サイト”STORY”より)

 

感想

とっても素敵な

 

可愛いイラストレーションの

筆の動きに

 

目を引かれて見ていると、

 

 

花が咲き

スルスルと枝が伸びて

 

やがてその花

ヤマブキが

 

地面にポツンと

咲いている。

 

 

とても素敵な

スケッチのような線が

 

映像とマッチする。

 

 

そしていつものことながら

前情報ゼロでの鑑賞だったが、

 

 

その映像が、

すぐにフィルムであると分かる。

 

 

16mmかな??

と、思いながら

 

もうその時点で、

 

ぬぬぬ!!!

や、やりますね〜〜!!!

 

山﨑監督!!

 

 

と、すっかり魅了されてしまった。

(早いw。まだ物語始まってないけどw)

 

 

お話も

なんとも独特な雰囲気。

 

 

社会性、争い、

金銭や人間の欲求、

家族について、

夢と挫折、

大人と学生など・・・

 

 

さまざまな問題が

散りばめられながら

 

多数の登場人物が

微妙に交錯していく群像劇。

 

 

 

悲劇に次ぐ悲劇に見舞われる

カン・ユンスさん演じる

岡山在住の韓国人、チャンス。

 

 

陽の当たる場所から

陽の当たらない場所に

 

移り住むことを余儀なくされる

彼の半生。

 

 

そんな彼に

次は何が起こるのだろうか・・・

 

 

そして、

本作の題名”やまぶき”は

 

祷(いのり)キララさん演じる

早川山吹の名前でもある。

 

 

彼女の圧倒的存在感と

 

自然体で居て

凛とした姿は

 

野性の美しい花に

そぐわしい。

 

 

他、キャストの皆さんも

それぞれ存在感があって

とても素敵でした。

 

 

人生には

いろんな問題と

いろんな出来事があり、

 

いろんな気持ちを

人それぞれが持ちながら

 

それを抱えて生きている。

 

 

陽が当たらなくても

密かに小さな花は咲く。

 

 

乾燥した日向では

ヤマブキが生きられないように

 

その場所でしか

生きられない命というものも

あるだろう。

 

 

しかし

どんな場所であれ

 

生きることに

皆変わりはない。

 

 

エンドクレジットも

とっても素敵で

素晴らしかったです。

 

 

こういう

他にはちょっとない

 

新しい瞬間を観られると

 

とってもワクワクしますね。

 

 

農業と映画製作という

 

面白い組み合わせの生活をしている

山﨑監督だからこそ

 

生まれる発想なのかもしれません。

 

 

ぜひ、ご覧下さい!!

 

 

(2022年11月25本目。本年度420本目、映画館237本目)

 

 

スタッフ

監督・脚本:山崎樹一郎

撮影:俵謙太

照明:福田裕佐

録音:寒川聖美

美術:西村立志

衣装:田口慧

ヘアメイク:菅原美和子

俗音:近藤崇生

音楽:オリビエ・ドゥパリ

助監督:鹿川裕史

アニメーション:セバスチャン・ローデンバック

編集協力:ヤン・ドゥデ、秋元みのり

プロデューサー:小山内照太郎、赤松章子、渡辺厚人、真砂豪、山崎樹一郎

制作プロデューサー:松倉大夏

キャスト

ユン・チャンス:カン・ユンス

早川山吹:祷キララ

山吹の父親:川瀬陽太

美南:和田光沙

柴田:三浦誠己

康介:青木崇高

山吹の母親:桜まゆみ

美南の夫:松浦祐也

山吹の彼氏/祐介:黒住尚生