鑑賞記録(2022.4.9~4.22)名匠たちが絶賛!生誕80年 クスシュトフ・キェシロフスキ監督 珠玉の10篇の物語『デカローグ』1988 @元町映画館

鑑賞記録(2022.4.9~4.22)

生誕80年

クスシュトフ・キェシロフスキ監督

『デカローグ』1988

@元町映画館

 

 

『デカローグ』1988/合計587分/ポーランド/カラー

「トリコロール三部作(『青の愛』『白の愛』『赤の愛』)」『ふたりのベロニカ』などで知られるポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキが1988年に発表した連作集

「デカ」は数字の”十”、「ローグ」は”言葉”を意味する。

旧約聖書の「十戒」を下敷きに、まるで人の心の中を覗き込んだかのような、現代を生きる人々の愛と孤独を、細やかに鮮やかに描き出した心揺さぶる珠玉の10篇。

もともとテレビシリーズとして製作されたがその質の高さが評判を呼び、1989年ヴェネチア国際映画祭で上映され、後に世界中で公開され賞賛された。

また本作中の「ある殺人に関する物語」「ある愛に関する物語」は再構築され『殺人に関する短いフィルム』『愛に関する短いフィルム』(共に88年)として劇場公開された。前者は感に国際映画祭審査員賞を受賞し、キェシロフスキの名は世界的なものとなった。

本作は公開時に、スタンリー・キューブリックが「重要な映画」と絶賛。そのほかエドワード・ヤン、侯孝賢ら数多くの映画作家たちがキェシロフスキの才能を羨望し賞賛した。(中略)

(↑チラシより抜粋)

 

『デカローグ』のパンフレットも購入しました!まだちゃんと読んでいません(毎度ちゃんと読めてない気が・・・)が、感想(これ)書いてからじっくり改めて読みたいと思います。そうは言いつつ、パンフレットの各篇の冒頭一部のみ抜粋させてもらっています。

 

モーセの十戒

モーセが神から与えられたとされる10の戒律のこと。

旧約聖書の出エジプト記20章3節から17節、申命記5章7節から21節に書かれており、エジプト出発の後にモーセがシナイ山にて、神より授かったと記されている

十戒の内容は神の意思が記されたものであり、モーセが十戒そのものを考え出し、自らもしくは他者に記させたものではない、とされている。

出エジプト記本文では神が民全体に語りかけたがそれが民をあまりにも脅かしたためモーセが代表者として神につかわされた、とされる。

シナイ契約、または単に十戒とも呼ばれる

二枚の石板からなり、二度神から渡されている。最初にモーセが受け取ったものはモーセ自身が叩き割っている。(ウィキペディアより抜粋)

原題

DEKALOG

 

10篇の物語

1.ある運命に関する物語 DEKALOG,JEDEN /56分

:「わたしのほかに神があってはならない」

コンピューターおよび現代科学を通信する知識人が、予測不能性(偶然)と遭遇する悲劇であり、科学の偶像化に対する戒めとも受け取ることができる。(『デカローグ』パンフレットP.4より)

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

息子のパヴェウがとってもかわいく、めちゃ賢い!!パヴェウの生きることへの素朴な疑問は、この世界を生きる人々にとって、答えのない普遍的な疑問ではないだろうか。「十戒」が下敷きになっていることは、チラッと聞いていたから、もしかして・・・という、、衝撃のラスト。人生は、自分の考えや行動が、及びもつかない出来事が起こりうる。ある程度は予想できたとしても、完璧に物事を測ることは不可能。人生において、”絶対”はないのだと、改めて思わされた。

 

2.ある選択に関する物語   DEKALOG,DWA /59分

:「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない」

神はみずからの名が威厳をもって使われることを望んでいるがゆえに、神の名をみだりに唱えてはならず、神の名を用いて偽りの誓いをしてもいけない。ことばの神聖をめぐる挿話であり、ある人間が発することばが他人に対して帯びる重要性を描いている。(『デカローグ』パンフレットP.6より)

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

究極の選択。そこを天秤に掛けたら、どう転んでも辛い結果が待ち受けていそうな。2人の命がどうなるかと思いつつ、意外な結末。選択は2択ではなく、意図せずとも?第3の道だったか。そしてこれから先、どうなっていくのか・・・

 

3.あるクリスマス・イヴに関する物語 DEKALOG,TRZY /58分

:「主の日を心に留め、これを聖とせよ」

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

とんだクリスマス・イヴだな・・・と私なら思ってしまう・・爆。登場人物のヤヌーシュとその妻の大人な態度に頭が下がる。エヴァの個人的な願掛けに付き合わされた元恋人ヤヌーシュだが、エヴァの中に潜む孤独と狂気を感じ取ったのか、つき合ってあげる。とりあえず、ラストはホッとしたかな。笑

 

4.ある父の娘に関する物語 DEKALOG,CZTERY /58分

:「あなたの父母を敬え」

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

すごい話・・・。決定的なことは明かされないまま終わるが、しかし、娘アンカが感じていた本能は、きっと、、当たっている気がする・・・。ただし、本当のことはわからない。事実を明かすことよりも、これからどういう関係で生きていくのか、そのためにどういう選択をするのかということに、重きを置いた二人。事実だけが、すべてではない・・・。

 

5.ある殺人に関する物語 DEKALOG,PIEC /60分

:「殺してはならない」

シリーズ中例外的に作り手の政治姿勢(死刑制度への反対)がにじむ挿話であり、「殺してはならない」の文言は殺人と死刑の双方にかかっていることを想像させる。本挿話は最も早い段階で着想されたもので、ほかの挿話群は本作から分岐したようなもの(ほかの挿話は、極度に残忍な本作に対する慰籍のようなものとして機能する)だという。(『デカローグ』パンフレットP.12より)

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

殺人に関する話だから、ある程度は覚悟していたが、これまたショッキングな話。1時間だが、そのラストまで恐ろしく、そして悲しい。人生が狂い始めるきっかけは、どこに潜んでいるかわからない。負の連鎖とも言える、悲しい経験が、また悲しい事件を引き起こす・・・。最初は全然バラバラに登場していた3人が、ゆっくりと大きなひとつの渦に巻き込まれるように、その後重なっていく。

 

6.ある愛に関する物語 DEKALOG,SZESC /61分

:「姦淫してはならない」

男女の(性)愛が中心的な主題となる挿話。(『デカローグ』パンフレットP.14より)

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

不格好で歪な形をしていても、最終的には、そこに愛は存在した、と私は思う。トメク青年というより、むしろマグダの方に。ラストのマグダの表情からは、トメクに対する愛情が見えたように思う。なんとなくその気持ち、わかるなぁ。笑

 

7.ある告白に関する物語 DEKALOG,SIEDEM /57分

:「盗んではならない」

幼女アーニャをめぐってエヴァとマイカの母娘がおこなう双方の「盗み」に言及していると考えられる。(『デカローグ』パンフレットP.16より)

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

衝撃のラスト。むしろここから彼女たち(マイカと幼子アーニャ)の本当の苦悩の物語が始まるのではないか。幼い娘アーニャの、本人にとっては他愛無い本能的な一瞬の行動が、本当の母マイカには、自分のすべてを否定されたように映ってしまったのかもしれない。そして、ラスト、マイカの行動に立ち尽くすアーニャ。2人の心情を考えると胸が締め付けられる・・・。どうかこれ以上傷付かないでほしい(すぐ戻ってほしい)と願うばかりだが・・・泣

 

8.ある過去に関する物語 DEKALOG,OSIEM /57分

:「隣人にかんして偽証してはならない」

劇中でエルジュビェタが語る話(第二次世界大戦中、ユダヤ系少女をカトリックだと偽って匿うことを、カトリック信者の女性が拒絶した)のことを指していると考えられる。この挿話は、キェシロフスキおよび共同脚本のピェシェヴィチの共通の友人であるユダヤ系女性作家ハンナ・クラル(1935年~)の実体験に基づいたものである。(『デカローグ』パンフレットP.18より)

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

第二次世界大戦中のある過去の話。理由あっての行動だが、理由はどうあれ、起こした行動の結果はひとつ。もし理由を知らされなければ、相手の想像で、疑念が生じることもある。のちに理由を話し、誤解が解けても、お互いがそのことを気にしながら長年生きてきたという事実。でも、こうして会って話し合えたことは、よかったですね。

講義中の例え話で、第2話の話と、近所に住む初老の男性は第10話の父ですね。話が跨るのとか、好きです。(他の篇の登場人物が、別の篇に何気に結構登場している)

 

9.ある孤独に関する物語 DEKALOG,DZIEWIEC /61分

:「隣人の妻を欲してはならない」

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

孤独によるすれ違い・・・夫婦であり、共に暮らしながらも互いに孤独を感じていたんであろう。劇中、隠していた秘密がバレ、紆余曲折しつつ、やっとのことで、今度こそ向き合えそうな予感・・・。もちろん、確証なんてものはありませんが。笑

 

10.ある希望に関する物語 DEKALOG,DZIESIEC /60分

:「隣人の財産を欲してはならない」

この挿話は、例外的に人間の物欲、金銭欲をめぐる黒い喜劇としての性質を備えている。(『デカローグ』パンフレットP.22より)

(出典:『デカローグ』チラシより)

感想

人間の金銭に対する欲。これは魔物ですね。誰しもが、この主人公の兄弟のようになる可能性を秘めている。私もこの状況なら、そうなっちゃうかも・・・なんて思ってしまいます。。よくドラマなんかで遺産相続で揉める資産家一族みたいなのがありますが、そこまでドロドロしてないまでも、金銭は人格をも変えかねない。怖いですね~。ラスト、兄弟の関係にとっては、ある意味これで良かったのかもしれませんね。

 

全体を通しての感想

一篇一篇が結構衝撃の内容。”十戒”を下敷きにしているから、何かしらあるだろうとは思っていたが。

ひとつの巨大団地?の住民たちが、各篇の主人公となっており、毎度特徴的な、いくつも窓のある大きな住宅団地が映される。そして時折、先にも記したが、登場人物が別のお話で交差することも。そういうの好きですね。オムニバスだけど、ちょっとずつ繋がる、みたいな。

ひとり(アルトゥル・バルチシ)だけほぼすべてのお話に登場する。語ることはないが、印象的に現れる・・・すべての話を繋ぐかのように。

内容も、人間の内面を見つめざるを得ないものばかりで、状況さえそうなってしまえば、ここに登場した人物たちの苦悩は、他人事ではなさそうな・・・

人生教訓とも言える、10篇。

各回1時間前後とはいえ、10回となると中々日程合わせるのが大変だった(当初、第9話だけ絶対観れないと思ったが、なんとか観れた)・・・中々大変だったけど、無事に全部観れてよかった!!笑

時間を置いて、また観返したい作品です。

 

(2022年4月25本目。本年度135本目。映画館49本目)

※↑10篇全部で1本と計算。