鑑賞記録(2022.8.18)バーバラ・ローデン監督『WANDA』1970@アップリンク京都

鑑賞記録(2022.8.18)

バーバラ・ローデン監督

WANDA』1970

@アップリンク京都

 

『WANDA』1970/103分/アメリカ/カラー/1.37:1/モノラル/DCP

48歳で世を去った(乳がん)バーバラ・ローデン監督・脚本・主演のデビュー作かつ遺作

マーティン・スコセッシ監督設立のザ・フィルム・ファウンデーションとGUCCIの支援で修復され、2022年7月9日に日本で初めて劇場公開。

1970年のベネチア国際映画祭で最優秀外国映画賞を受賞したアメリカ映画であり、1971年のカンヌ国際映画祭で上映された唯一のアメリカ映画。その名声とは裏腹にアメリカ本国ではほぼ黙殺されたが、マルグリット・デュラス、マーティン・スコセッシ、ジョン・カサベテス、イザベル・ユペール、ダルデンヌ兄弟、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、ジョン・ウォーターズ、ケリー・ライカート、ソフィア・コッポラら世界の名立たる映画人やアーティストたちが賞賛している。

アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。時間が経つにつれて貴重な作品として認識された本作は、アメリカ映画の公式な歴史にはほとんど登場しないが、アメリカ・インディペンデント映画の代表作として注目されている。

(↑映画.comより抜粋。一部引用)

当時の夫だった エリア・カザンが制作協力している。ローデンは、彼からの独立宣言とも言うべき本作を残す。

(ウィキペディア、公式サイトより引用)

その粒子の粗い16mmフィルムの質感はティファニーブルーを基調に、シネマ・ヴェリテ・スタイル(ドキュメンタリー撮影手法)で剥き出しのアメリカの風景をスクリーンに映し出す。

“ 私は無価値でした。友達もいない、才能もない。私は影のような存在でした。『ワンダ』を作るまで、私は自分が誰なのか、自分が何をすべきなのか、まったく分からなかったのです。” バーバラ・ローデン

(↑公式サイトより)

 

監督・脚本・主演:バーバラ・ローデン
director・writer・act:Barbara Loden

1932年7月8日アメリカ、ノースカロライナ州アッシュビルで生まれる。幼少期に両親が離婚すると、祖父母に育てられる。16歳でニューヨークに移住し、ロマンス雑誌のモデルとして働き始めた。女優になる目的でアクターズ・スタジオで演技を学ぶ。 57年、ニューヨークの劇場でデビュー。ロバート・レッドフォードや、ベン・ギャザラと一緒の舞台を踏んだ。60年、エリア・カザン監督作『荒れ狂う河』にモンゴメリー・クリフトの秘書役として、また、ウォーレン・ビーティの姉を演じた『草原の輝き』(61)に出演する。66年に23歳年上のエリア・カザンと結婚する。70年、撮影監督兼編集者のニコラス T・プロフェレスと共同で、11万5千ドルというわずかな予算で、自ら監督・脚本・主演した『ワンダ』を制作。 長編映画を監督することはなかったが、Learning Corporation of Americaのために2本の教育用短編映画を監督している。78年、ローデンは乳がんと診断され、80年9月5日、ニューヨークのマウントサイナイ病院にて48歳で病死。

 撮影・編集:ニコラス T・プロフェレス
cinematographer・editor:Nicholas T. Proferes

1936年アメリカ生まれ。25歳でニューヨークに移り住み、友人の紹介でダイレクト・シネマ/シネマ・ヴェリテの先駆者の一人でもあるドキュメンタリー映画監督のD.A.ペネベイカーと出会う。彼は見習い編集者として採用され、その後、撮影を学ぶことになる。68年にはロック・フェスティバルの源流とされる『モントレー・ポップ・フェスティバル』におけるドキュメンタリー用の撮影監督を務める。以降、マーティン・ルーサー・キング牧師を描いた『Free at Last』(69)でヴェネツィア映画祭最優秀ドキュメンタリー賞を受賞する。本作製作後も、ローデンとの仕事を継続し、脚本を何本か書いたが製作は実現しなかった。

 制作協力:エリア・カザン
helping hand:Elia Kazan

1909年トルコのイスタンブールでギリシャ人の両親の下に生まれ、4歳の時にアメリカへ移住した。名門ウィリアムズ大学を卒業後、イェール大学演劇大学院へ進んだが2年で中退し、ニューヨークの劇団「グループ・シアター」に入団。映画『欲望という名の電車』(51)、『波止場』(54年)、『エデンの東』(55)といった名作を世に送り出した、20世紀を代表するハリウッドの巨匠の一人である。一方で、ハリウッドの暗黒史・赤狩りでの行為でも、後世に名を残した人物でもある。すぐれた映画監督、あるいは舞台演出家として名高いカザンがハリウッドで成し遂げた偉業 に、「アクターズ・スタジオ」の設立がある。『荒れ狂う河』『草原の輝き』、舞台「アフター・ザ・フォール」の縁で、バーバラ・ローデンと66年に結婚した。2003年、94歳で死去する。

Mr.デニス(ノーマン・デニス):マイケル・ヒギンズ
Norman Dennis:Michael Higgins

1920年アメリカ・ブルックリン生まれ。父親はアイルランドからの移民で保険のセールスマン、詩人でもある父親の影響で早くからシェイクスピアに親しんでいた。アメリカのテレビ史上、最も長く続いたプライムタイムのドラマ「ガンスモーク」(55)、「ロー&オーダー」(90)にゲスト出演する。 その後、主に映画で活躍し、フランシス・フォード・コッポラ監督『カンバセーション…盗聴…』(74)、アラン・アイダ主演『ジョー・タイナンの誘惑』(79)、アラン・パーカー監督『エンゼル・ハート』(87)、ニコール・キッドマン主演『ステップフォードの妻たち』(04年)、チャーリー・カウフマン監督『脳内ニューヨーク』(08)など60本以上の作品に出演した。2008年、心不全のため88歳で死去した。

(↑公式サイトより)

 

受賞

ヴェネチア国際映画祭(1970、第31回)

最優秀外国映画賞

 

原題

Wanda

 

一言あらすじ

ペンシルベニア州の炭鉱町。夫に離別され、子供も職も失い、お金もないワンダ(バーバラ・ローデン)。バーで知り合った男と、いつの間にか犯罪の共犯者として逃避行を重ねるが・・・

 

感想

なんだかすごいキャラクターの

ワンダ。

 

 

仕事はノロくてクビになり、

 

夫は愛想を尽かして子供を連れて

他で暮らしており、

 

自分は姉の家に居候。

 

もちろんお金も無い・・・

 

 

 

隣人からもらった

わずかなお金も

不注意から盗まれる・・・

 

 

 

生気を感じることのない、

スローなワンダの動きと口調。

 

 

ただフラフラと町を歩き、

ビールを飲む・・・

 

 

奢ってくれた男と寝る・・・

 

そしてまた捨てられる。

 

 

 

環境音、工事現場の音、

生活音、赤ちゃんの鳴き声、

パトカーのサイレン、

ラジコン飛行機の轟音・・・

 

 

ノイズの様な音がしょっちゅう鳴り、

 

まるで落ち着くことが出来ない様な

彼女の心境ともリンクする。

 

 

 

 

そんな中、

ある男、デニスと出会う・・・

 

 

そこから彼女の状況は変化していく・・・

 

 

犯罪を犯しているデニスと

行くあてもないワンダ。

 

 

二人の逃避行が始まる・・・

 

 

 

観ているこちらも

若干イラッとしてしまう様な

ぬけたワンダだが、

 

 

ワンダもそれを自覚していて、

自分は何も出来ないのだと

とうに諦めている。

 

 

 

どうしようもない、

 

今までも、これからも

いつだって、

 

私に何かできるはずがない

 

 

ただ惰性で生きているような彼女。

 

 

 

そんな彼女が

デニスのある計画の手助けを求められ、

 

ワンダはデニスを助ける。

 

 

デニスは褒める、よくやったと。

 

 

初めて?誰かに褒められて、

役に立てたと実感する。

 

 

初めて何か出来た、役に立てた・・・

 

 

 

出来た内容は

正直言っていただけないが、

 

この時のワンダには

内容など関係ない。

 

 

ダメダメな子が

初めて何かが出来た様な

 

なんだがグッとくる瞬間だった。

 

 

 

そこから彼女に

きっと幼い頃はあったであろう

自我の様なものが

深い記憶の底から出てくるように

 

私は感じた。

 

 

 

さらなる悲劇は起こるが、、、

 

 

ワンダのこの先は

いかに・・・

 

 

 

ワンダのように感じている人も

きっと世の中には

大勢いると思うし、

 

形や能力は違えど、

同じような虚無感を抱えている人も

少なくないのではないだろうか。

 

 

 

憎めないキャラクター、

笑えない現実、

強者優位で抑え込まれる弱者

 

 

 

現代人の多くも抱えていそうな問題を

 

連続する悲劇と共に

劇的に映し出した作品だと思う。

 

 

 

(2022年8月27本目。本年度296本目、映画館154本目)

 

スタッフ

監督・脚本・主演:バーバラ・ローデン

撮影・編集:ニコラス T・プロフェレス

照明・音響:ラース・ヘドマン

制作協力:エリア・カザン

提供:クレプスキュール フィルム、シネマ・サクセション

配給:クレプスキュール フィルム

 

キャスト

ワンダ・ゴロンスキー:バーバラ・ローデン

ノーマン・デニス:マイケル・ヒギンズ

ワンダの姉:ドロシー・シュペネス

ワンダの義理の兄:ピーター・シュペネス

ジョン(ワンダの離婚調停中の夫):ジェローム・ティアー